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滋賀県立大学人間看護学研究院 本田可奈子さん
皆様こんにちは。今回のリレーブログを担当させていただきます。滋賀県立大学の本田可奈子と申します。ブログのご依頼をいただいてから内容を考えていたところ、NHKの朝ドラで、心に刺さったことばがありました。みなさんご存じですか?現在放送中のNHKの朝ドラ「虎に翼」。このドラマから最近感じたことをお話しようと思います。 このドラマは、「日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ、一人の女性の実話に基づくオリジナルストーリー。困難な時代に立ち向かい、道なき道を切り開いてきた法曹たちの情熱あふれる姿を描く。(NHK HP ; https://www.nhk.jp/p/toranitsubasa/ts/LG372WKPVV/)」です。ここには第二次世界大戦前の女性が弁護士資格を得るまでの苦労、女性は裁判官になれないという差別、そして結婚すると妻には親権や財産管理権も参政権もない法的に「無能力者」とされていた状況が描かれています。この中で主人公は、旧民法の家族制度に対して「家と言う庇護の傘において守られてきた部分は確かにあるが、個人としての尊厳を失うことで守られても、大きなお世話である」といいきるのです。主人公はまさしく新時代の価値観をもった人間といえるでしょう。40年ほど前、わたしの世代は「新人類」といわれていました。「新人類」とは「前の常識を軽々と打ち砕くような考えをもち、枠にとらわれない感性や価値観をもっている世代」という意味です。看護基礎教育時代の先生方からは何かというと「あなたたちは新人類や」「あなたたちを理解できん」といわれたものでした。わたしたちの上の世代は、戦後の復興と高度成長期を辛抱と頑張りで乗り越えてきた世代です。自分の考えを遠慮せずいいはなち、上から目線的な態度や忖度することをきらう。今から考えると自分を何様とおもっていたんでしょうね。先輩方がびっくりされていたのも納得です。 でも、社会にでると気づきます。上の人だから上から目線なんだ、忖度って必要なんだ、空気をよまないと、など。とはいうもののやっぱり「虎に翼」流にいいますと「はて、男女平等に教育をうけてきたのに、なんで看護師となるとこんな扱いをされなあかんのやろ」「看護師は3年おってくれたらいいなんて、使い捨てか?」とか(あくまでも個人の経験です)。現実の厳しさ、看護職のおかれた現実、基礎教育と現場の乖離、それ以上に自分たちの力(能力もパワーも)のなさ。いろんなことに抗ってきたように感じます。看護短期大学1年生のときの先生に「あなたたちのそんな態度が看護師の地位をおとしめるのよ」と怒られたことがありました。その先生はそのとき看護職に対してどんな現実をみていたのでしょうか。そしてこの30年、看護は専門職としての道を確実に歩んできたと思います。大学もたくさんできてキャリアの道も広がりました。これには多くの先人の方のたゆまぬ声があったのだと思います。現在、わたしは大学で組織の中でも微細ながら意見を言える立場となりました。学部生の考えや、院生の研究課題から自分とは異なる価値観を感じることが多々あります。 最後になりますが、「虎に翼」でわたしが心に刺さった言葉を紹介します。主人公の恩師の穂高先生が退官するときに主人公に言った言葉です。「気を抜くな。君もいつかは古くなる。常に自分を疑い続け、時代の先を読み、立派な出がらしになってくれたまえ」。出がらしとはお茶の葉などを煎じたり煮出したりして、もう搾り出せなくなった残りかすのことです。自分が古くなっていることに気が付かないと、きっと新しいことに抵抗したり、「そんなん必要ない」なんていって、現実の変化を誤って判断し、進歩を遅らせることになってしまうでしょう。出がらしについて調べてみました。出がらしは、乾燥させることで再利用することができるそうです。脱臭剤の役割や、紅茶の出がらしはお菓子のアクセントにもなるらしい。また、コーヒーの出がらしは本来酸性で、窒素やカリウムなどの栄養成分を豊富に含んでおり、栄養が足りない庭の肥料に最適だそうです。定年まであと2年。終わりといって気を抜くな、出がらしになっていることに気づき、栄養となって他を養えるりっぱな出がらしになろう!!
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