学会からのお知らせ

日本看護研究学会主催から会員の皆様に向けて情報を発信しております。

第99号 (平成27年12月20日発行)

一般社団法人日本看護研究学会 第41回学術集会を終えて

一般社団法人日本看護研究学会第41回学術集会
会長 宮腰 由紀子
(広島大学)

一般社団法人日本看護研究学会第41回学術集会を,2015年(平成27年)8月22日(土)と23日(日)に,広島市の平和記念公園内にある広島国際会議場を会場として,メインテーマ「日本から世界へ看護,発信!─ いのちと暮らしを支える和と輪と環と話 ─」を掲げ,開催させていただきました。
暑い最中と平和祈念式典やお盆の混雑を避けて設定した開催日でしたが,開催決定の4年前には全く予想しなかった近年に無い広島の野球ブームの御蔭で,皆さまには宿舎の確保などに御面倒をおかけしましたことを,初めにお詫び申し上げます。そのために会計的御支援を頂きました事を心苦しくも有難く,ここに御礼を申し上げます。そうした中を全国から1,300人もの皆さまが御参加くださり,基調講演,特別講演3題,教育講演4題,鼎談1題,シンポジウム1題,パネルディスカッション1題,特別交流集会5題,ランチョンセミナー4題,交流集会4題,一般演題369題,そしてナーシングサイエンスカフェにおいて,広島国際会議場の各所で充実した交流が展開されましたことを,心より感謝を申し上げます。
広島市での開催は19年ぶりでしたので,本学術集会が,看護実践の基盤となる研究発表と情報交換の場として有意義なものとなるように,中国・四国地方会運営委員会を中心に多くの仲間たちの和をもって,一同,鋭意準備を進めさせていただき,皆で当日の運営に当たることができました。また,学会本部の支援の輪と,全国各地から御協力の環も頂戴し,無事に開催できましたことを心から御礼申し上げます。なお,平成26年度8月豪雨災害で生じた広島市北部大規模土砂災害被害に対し,皆さまから温かい励ましとご支援をいただきました。この場をお借りして併せて広島市民・広島県民として御礼申し上げます。さらに,広島県・広島市等からの御助成,中国・四国地域の各県看護協会の御後援,企業・団体さまからの協賛・展示・広告など,多くの皆さまにも御支援を頂くことができました。改めて御礼を申し上げます。
時間の配分上,会長講演の時間が短くなり,申し訳ないことではありましたが,メインテーマのサブタイトルに示しました「─ いのちと暮らしを支える和と輪と環と話 ─」に焦点をあてて,これからの看護研究への期待を述べさせていただきました。座長を務めて下さいました中木先生にはテーマを御覧になられて御不安を抱かせてしまい,申し訳ないことでしたが,思いは伝わったようでしたので,講演後の先生の御挨拶に少しほっとした次第でした。
急速に変貌する国際的保健医療のうねりではありますが,そうであればなおのこと,国内外から賞賛を寄せられている日本の看護職者が日々の実践活動で展開している適切で和やかで丁寧でしなやかな看護の良さ,日本の看護と活動の知を発信することは,世界の看護の発展にも大きく貢献するはずです。そこで日本の看護の知をより多く伝えよう,という思いで示したメインテーマの本題「日本から世界へ看護,発信!」は,基調講演として,東京大学の真田弘美先生にお引き受けいただきました。先生のこれまでの御活動を踏まえ,エビデンスを蓄積して看護を可視化し発信していく重要性を皆さまにお示し下さいました熱のこもった御講演は,改めてシッカリと研究を行う意欲を奮いたたせて下さり,聴衆の皆さまはとても感動したとおっしゃっており,お願いして良かったと嬉しく存じました。
看護する己れをも相手をも知ることが大切だと思い,看護の対象である〈いのち〉を考える特別講演を,生物学界で世界的活躍をされている広島大学の長沼毅先生にお引き受けいただきました。斬新で力溢れる世界観と生命観を,素敵な写真が満載の引き込まれるプレゼンテーションでお示し下さり,改めて生命の素晴らしさに感動しました。そして,日本文化の底流にあるものを探る特別講演を,各大学機関との古文書調査などに携わられて造詣が深い,日本の古社の一つである御調八幡宮の宮司,桑原國雄先生からいただきました。言葉や所作の一つ一つの意味に気付かされ,もう一度のこれまでの文化を問い直す必要性を考えさせられました。紙面の限りがありますので割愛せざるをえませんが,看護対象の背景にある様々な文化理解について,ビッグデータやロボットとの向き合い方,地域を支える看護の在り方について,熱心な御講演と討議を頂きました。そして広島原爆当時の看護を伺いながら,欧州の看護教育の改革の状況を放射線看護を切り口として御提示頂くとともに,放射線と看護の在り方を御講演いただきました。
最後に改めて,第41回学術集会へ賜りました御支援と御協力に衷心より感謝を申し上げますとともに,皆さまと日本看護研究学会の益々のご発展を祈念申し上げて,報告かたがた御礼の挨拶とさせていただきます。

一般社団法人日本看護研究学会 第41回学術集会印象記

関東学院大学看護学部
永田 真弓

第41回学術集会は,2015年8月22・23日の2日間にわたり,広島平和記念会議場にて開催されました。かつて勤務していた広島での開催ということもあって,私はいつも以上に参加を楽しみにしておりました。学会前夜,新幹線を降りました後,広島駅からは路面電車で,会場近くのホテルまでまいりました。車掌さんに路線を確認してから電車に乗りましたが,‘降りるのは次……?’とアナウンスを聞きもらさないようにと思っていましたところ,「次が袋町」と車掌さんが近くに来られて,教えてくださいました。親切な女性の車掌さんに感激。あたたかい気持ちをいただいて,ますます学会参加への気持ちが高まりました。
翌朝は,学会1日目。清々しい晴天のなか,平和大通りを真っすぐに歩いていくと,学会会場のある平和記念公園に着きました。一瞬ではありましたが,慰霊碑の向こうに見える原爆ドームに立ち止まり,広島平和記念会議場へと入りました。会長講演の会場に着席して間もなく,宮腰由紀子先生が学会のメインテーマ「和と輪と環と話」をご紹介くださいました。また,プログラムもご一緒にご案内くださいましたから,参加を予定していました講演等のイメージがわいてまいりました。教育講演「欧州看護教育における放射線看護は今」では,Gerhilde Schüttengruber先生がボローニャ宣言に始まった欧州履修単位相互認定システム(European Credit Transfer System; ECTS)について,詳しくお話くださいました。1年60単位を基本として,学士は180~240単位,修士は60~120単位,博士は大学毎で規定はないとのことでしたが,この欧州の高等教育圏の確立を目指した取り組みに,グローバル化の波は,すでに欧州連合(EuropeanUnion; EU)を中心に始まっていると,大学Ver. EUを垣間見た気がいたしました。同時に,学部,大学院という枠ではない,学位授与プログラムとしての大学という教育課程のあり方には,継続的な教育が求められる看護学分野への示唆のようにも感じたご講演となりました。
次に,一般演題の示説発表ブースへと移動いたしました。小児保健コーナーでご発表の高野政子先生とは,混合病棟での小児看護に関する研究結果,その現場の課題等,多くの情報交換をすることができました。示説前での情報交換の際には,多くの先生方とお会いする機会にもなりまして,大変有意義な時間となりました。そして,気付けばランチの時間。ランチョンセミナー「航空における安全の取り組み」のなかでは,阿部和利氏が安全文化を形成していくうえで重要なトップコミットメントとして,非懲戒の方針や2.5人称の視点がご紹介されました。その具体的な取り組みをお聞きしながら,航空業界と看護・医療との共通部分を感じて,秋から始まる学生実習への安全対策を考えておりました。
午後は,特別講演「愛しき哉極限生物の命!」から始まりました。スクリーンに映し出される砂漠や深海等,極限のなかで観測された様々な生物の不思議,そこにご一緒にある長沼毅先生のお姿にも,研究活動と冒険の区別がつかなくなるほどユニークな世界がありました。スターウォーズさながらの映像に,本当に地球上のことなのかしらと驚きの連続でしたが,一方では先生の探求心の深さにも感動を覚えておりました。そして,真田弘美先生の基調講演「日本から世界へ看護発信─褥瘡看護を例に」をお聞きしました。実践のなかにある課題を突き詰め,研究によって褥瘡看護が改善されていくという,その一連のプロセスは,看護過程のなかに研究が組み込みこまれていることが必然のようにも思えまして,看護の臨床研究のあり方として,多くの示唆をいただきました。
翌日の業務のため,このあと開催される鼎談や交流集会,懇親会には,残念ながら参加することができませんでしたが,夕食にお好み焼きを買って新幹線に乗り込み,最後まで,学会参加を満喫いたしました。本学会への参加を通じて,「和と輪と環と話」を体感することができ,そしてまた,この体験を振り返る機会をいただきましたことによって,大会の余韻をあらためて感じております。秋から始まる講義・実習,そして研究等,自分自身の活動へと繋げられたらと思います。この学術集会を企画・運営くださいました宮腰由紀子会長をはじめとして,企画委員・実行委員の皆様方に,心よりお礼申し上げます。