The 50th Anniversary日本看護研究学会が目指したもの (一社)日本看護研究学会の50周年に際し、心よりの敬意を払うとともに、その間の年月を振り返るとき、私自身の職歴・研究歴には常にこの学会の存在があったことを改めて感慨深く思い起こしている。本学会を通して得た様々な知見は、看護教育や研究を進める上での道しるべであり、また、この学会自体が、看護を社会に開示し、情報発信していくための重要な窓口でもあった。それゆえ、学会の運営に関わるようになってからは、一層、その責任を全うするために模索し、その時々の最善を尽くそうとしてきた思いがある。 本企画の中では、学会設立時の諸先輩方々の思いと歴史を知る者として「古きを紐解く」役割を果たし、また、その中で、本学会が何を大切にしながら、何を目指してきたのかを、私なりの理解ではあるが、残しておきたいと思う。ばから、高等学校衛生看護科の教員養成のために全国の4国立大学の教育学部に開設された「特別教科 (看護)教員養成課程」は、国立大学で初めて看護師免許を持つ看護教員を輩出するための4年制課程であった。専門学校における看護師養成がほとんどであった時代に、大学教育としての看護教育の在り方を探るべく、4大学の教員が毎年1回集結して「四大学協議会」を開催し検討を重ねていた。そして、その会議の中で、まずは、大学で教える「看護学」を学問として確立・成熟させるための看護学会設立への機運が高まり、本学会の前身である「四大学看護学研究会」の第1回学術集会が1975年、徳島大学において開催された。その後、学会としての充実が図られつつあった第8回学術集会からは「日本看護研究学会」1.学会設立の経緯と特色1)学会設立の経緯 本学会の生い立ちは60年前にさかのぼる。1960年代半山口 桂子(愛知県立大学 名誉教授)と名称変更し、全国規模の看護学会へと発展してきた。 私自身の「四大学看護学研究会」との関わりは、私が母校である千葉大学の同課程に実習担当教員として採用されたことが始まりであるが、同課程内に置かれていた学会事務局の業務を一部担当させていただきながら、同課程の閉鎖後も会員として、役員として、「看護学」を言葉にするために、共に歩んできた。2)本学会の特色 本学会の特色は主に2つあると考える。 1つは、その人の専門領域や職種や取得免許に関わらず、誰でもが会員になれたことである。それを受けて、さまざまな研究者が多彩な看護領域の研究を発信してきた。今では当たり前のことであるが、臨床現場で人と人とのかかわりから生まれる様々な現象や看護実践を説明するためには、他の多くの学問においてすでに明らかにされている原理・原則を活用できる(しなければいけない)ことをこの学会で学ばせていただいた。「学際性」「基礎と臨床」「看護学教育と研究」などは、本学会のこれまでの学術集会においてメインテーマとして掲げられたものの一例であるが、本学会の趣旨を端的に表したものであった。また、学術集会で発表される演題のバリエーションは、看護の専門領域を問わず多種多彩で、看護現象が様々な切り口のアプローチで研究されており、興味深いものばかりであった。 もう1つは、「研究者の育成」を、「奨学会」事業や学生会員の設定などにみられる学会の方針として打ち出してきたことである。特に当初の「奨学会」事業では、若手研究者を対象として、今では許されないルールではあるが、研究計画書が認められたのちには、期限の中で一定の研究成果を提出する以外は、その奨学金の使い道や領収書を提出する必要のないものであった。現代のように看護学研究への助成制度などが普及していなかった時代においては、画期的な制度であり、自由な風土の中で進められた貴重な研究が多々発表された。余談ではあるが、奨学会研究を発表された諸先輩や後輩の方々は、その後も広く看護界で活躍され、本学会の中心となって支えている(きた)皆さんでもある。 また、本学会では、2011年の東日本大震災以降、「大規模災害支援事業」を展開しているが、看護学生や若手研究者を対象として特化したこの事業は、今なお継続されている。この取り組みもまた、本学会の特色である「研究者育成」に通じるものである。 以上のような特色にみられるように、学会設立当初からの、研究の経験や実績を問わない、間口や裾野を広くした学会の姿勢は、その後も自由で垣根のない研究発表やJapanese Society of Nursing Research 7
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