一般社団法人日本看護研究学会第47回学術集会

ごあいさつ

 このたび,一般社団法人日本看護研究学会第47回学術集会の会長を拝命いたしました,東北大学の塩飽(しわく)です。
 2021年8月21日(土),22日(日)の2日間,第47回学術集会をオンラインで開催させていただくこととなりました。
 テーマは「脳とこころのケアとサイエンス」といたしました。

 私の看護師としての最初の臨床現場は手術部でした。そこで同じ重症の火傷の子供の手術を何度も担当し,火傷は徐々に治っていっても心が荒れていくことを目の当たりにしました。その経験を出発点にして,大学院では子供のメンタルケアを学びました。その後約30年にわたってがんや発達障害の子供やご家族のメンタルケアに実際にかかわってきたなかで実感したことは「人間はこころによって成り立っている生き物だな」ということでした。
 そして1996年に出版されたある論文を読んで,脳とこころは連動することを知りました。その論文は”Ana María Magariños, Bruce S. McEwen, Gabriele Flugge and Eberhard Fuchs: Chronic Psychosocial Stress Causes Apical Dendritic Atrophy of Hippocampal CA3 Pyramidal Neurons in Subordinate Tree Shrews. The Journal of Neuroscience, 16(10): 3534-3540,1996(https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.16-10-03534.1996)”です。この論文は,慢性的な心理社会的ストレスを与えられたネズミの脳では,海馬の脳神経細胞の先端で特異的に萎縮がおきるという内容でした。目に見えないストレスは脳にダメージを与えることが実験によって示されていました。
 人間はこころによって生きている,という私の感覚とこの論文の内容は相通ずるところがあり,それ以来こころと脳と体の関連に興味を持つようになりました。また一方で,脳とこころの関係性が多くの研究者によって明らかにされるようになり,それらの生体としての反応が遺伝的にプログラムされていることは,今では常識になりました。
 人間の脳とこころの活動は相互に強く影響し合い,また体内外のストレスに応じて,ダメージを受けたり耐えたり回復したりしています。適切なケアの提供は,脳とこころを修復し,さらに以前よりたくましくなる変化をもたらすこともあります。
 これらのメカニズムについて学び,それらの知見をケアに生かす時代がやってきたと思います。今回の学術集会のテーマはこのような考えから定めたものです。
 2021年は東日本大震災から10年の節目を迎える年でもあります。予測が困難な様々な災害やCOVID-19という困難に直面させられる今の情勢だからこそ,脳とこころのケアとサイエンスを皆様とともに学び活かしていきたいと思っております。
 第47回学術集会は,COVID-19の影響を考慮して,講演演題は事前に収録した動画を参加される皆様のご都合に合わせて視聴していただくオンデマンド配信とし,一般演題(口演)の発表や交流集会等で意見交換を行っていただく企画については,双方向のライブ配信での開催を準備しております。
 当初,本学術集会は仙台で開催する予定でしたが,COVID-19の状況から何度か開催方法を見直し,ハイブリッド形式をとりやめ,最終的にはオンライン開催することになりました。これにともない,企画内容を大幅に変更して急ぎ準備を進めているところです。
 本学会としては初の新しい学術集会開催形式にチャレンジし,New Normalの基盤となるよう尽力したいと考えております。
 皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻
小児看護学分野 教授        
塩飽 仁(しわく ひとし)